赤城工業株式会社 特殊装備品 キャスバン アイスハーネス
 
 
 
航空自衛隊 航空救難団 

航空自衛隊の中の航空総隊に隷属し、自衛隊機の墜落事故などが発生した際、 その機体・乗員の捜索、救助活動を主たる任務とする一方、救助要請(災害派遣要請)にも対応し直ちに活動を開始する『航空自衛隊航空救難団』。 その救難錬度の高さから「最後の砦」と形容される。

 

航空自衛隊 航空救難団 千歳救難隊   

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北海道の空の玄関口として広く知られる新千歳空港に隣接する千歳基地の歴史は古く、大正15年にまで遡る。当時小樽新聞社(現北海道新聞)の社機であった「北海1号」という飛行機を近くで見たいという千歳村民の強い希望により、村民自らがこの場所を開墾し、手作りで飛行場を造成したのが始まりである。そのような経緯もあり地域住民の基地に対する理解は深い。今も地域とより良い関係で共存する千歳基地で、厳しい自然と向き合い任務に従事する千歳救難隊を取材した。

航空自衛隊 航空救難団 千歳救難隊

北海道の周辺には離島が多数存在し厳しい気象環境ということもあり、千歳救難隊は実ミッションが非常に多い部隊のひとつである。とくに緊急患者空輸や海難救助での出動が多く、訓練は洋上訓練が中心だ。

この時期(撮影時12月)の水温は、およそ2~3℃と北の海の水温は想像以上に冷たい。果たしてそんな冷たい海中へどのような装備で入るのか興味が沸く中、まずはスクーバーセットから見せて頂いた。<br><br> 案内してくださったのは、ベテラン先任救難員の阿部准尉と若く精悍な松本二曹だ。二人とも説明が巧みで一つ一つ丁寧に解説していただいた。スクーバーセットはいかなる時でもすぐに出動できるようボストンバッグのような形状の大きなバッグの中にぎっしり整然と詰め込まれている。ドライスーツ、インナーフリース、フィン、シットハーネスなどメディックの活動の基となる主要な装備品が次から次へと出てくる。

前述どおり周辺海域の水温は大変低く、こちらでは一年の3分の2以上はドライスーツを着用しているとのことで、スーツの点検や手入れは欠かせない。メディックにとって装備品とは任務を遂行するのに必要不可欠な物であると同時に自らの生命を守る大切なパートナーでもある。スーツやインナーは体温低下を防ぎ、シットハーネスは航空機と自身を繋ぐ。全ての道具がそれぞれの役割を持って存在していることをここでは強く感じられる。

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そして次に見せていただいたのは、使用頻度の最も多い緊急患者空輸セットと呼ばれる救急バッグである。この日のつい一昨日も利尻島から旭川まで急患空輸任務に当たっていたところだという。

バッグの中身は感染防止衣や布製の折りたたみ式担架など至って基本的な装備になっており、あとは予想される患者の様態にあわせてその都度、素早く中身を補充して出動している。

救急バッグの次は山岳装備品に移る。山岳救助についてはその殆どが北海道警や陸上自衛隊に派遣要請が出されるため千歳救難隊では山岳での出動は極めて少ない。しかし当然ながら装備は常に万全を期して待機している。プーリーやアッセンダー、カラビナ、ロープをシステムを組んだ状態でザックに入れており、それを広げると今すぐにでも救助態勢に入れそうだ。

ところで、山岳用のアイテムの中で珍しいものを見つけた。それは熊除けスプレーなるもので、その名の通り熊を撃退するものである。スプレーの主成分は唐辛子エキスで、熊に直接噴射することで強力な刺激と痛みが熊を追い払う。いかにメディックが強靭な肉体を持っているとはいえ、やはり山では熊、海ではサメへの遭遇を常に警戒していなければならない。

その他にも様々な専門的な装備品が格納されており彼らの技能の広さを伺い知ることができる。

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器材庫を案内してもらった後は、場所を移動し航空機の格納庫へと案内される。格納庫では降下用の落下傘やスキー板、工具、ボイヤントスリングなどの各種救助用スリング、ストレッチャー、スノーモービルなど大型の装備品が格納されている。

スノーモービルは千歳救難隊特有の装備だが、これは救助に使用するのではなく冬山での訓練に於いて管理用に使用している。ボイヤントスリングは地上からヘリに要救助者を吊り上げるものであるが、ヘリの中へ収容する際に収容者がスリングを素早く引き揚げられるように、スリング本体に取っ手をつけて工夫されている(この改良点は現段階では規格統一がされていないのでまだ実運用には至っていない)。これはとても小さな改良点ではあるが、このようなことは現場で一刻一秒を争う状況では非常に重要になる。

近年、防災ヘリ、消防など他救助機関でも救助技術や装備品の向上は著しく、ときに救難隊を上回っていると感じる場面もあると阿部准尉は言っている。この事は、救助の最高峰であり続けなければならないという使命感を持つ彼らにとって大変良い刺激を与え、またそのようなレベルの高い他機関から謙虚に学び、自分達の技術、装備品の向上へと繋げていく。このボイヤントスリングの小さな改良のように救助の現場では常に進化が求められ、それに携わる者達も日々切磋琢磨しているのだ。

その他、格納庫にあるのは体力向上のためのトレーニング器具や、クライミングの練習をするための可動式人工壁のトレッドウォールなどである。

これらを一通り見せてもらった後は、そこに格納中であったUH-60Jを間近で見せてもらい、更に中まで見学させていただいた。外観から見て想像していたよりも搭乗スペースはずっと狭く、この限られた空間の中に様々な救助資器材が積まれていた。このようにヘリの内部の装備品まで見せていただけたことは、今後もメディックの装備を探る上で大変貴重な体験となった。

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この千歳救難隊の取材を通じて感じたことは、隊長以下、パイロット、整備員、救難員と、それぞれの持ち場の者たちが一体となり、経験豊富で的確な意見を進言できるベテランの先任達が自然と隊員達を引っ張っていく、戮力協心して任務にあたる素晴らしいチームだということだ。

今季は例年より積雪が多く一段と厳しい自然環境であるが、彼等は逞しく雄大な北の大地を守っている。
(2012.12)

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航空自衛隊 航空救難団 千歳救難隊の皆さま、取材へのご協力ありがとうございました。

 
 
 
 
 
 
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