消防 レポート 311 仙台市消防局 若林消防署 消防探訪 東日本大震災 2011

2011年3月11日に発生した東日本大震災により、未曾有の被害を受けた東北地方。自身も被災し、多くの不安をかかえながらも懸命の救助にあたった仙台市若林消防署の隊員たちに話を聞くことが出来た。 被災地の隊員が何を思い、感じたのか。その声を、ありのまま受け取って欲しいと切に願う。

消防 レポート 311 仙台市消防局 若林消防署 消防探訪 東日本大震災 2011
写真提供:仙台市消防局

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写真提供:仙台市消防局

“何から手をつけていいのか、何が出来るのか、
とても不安になった…“


ある女性消防隊員が言った。「震災発生直後の瓦礫の山、破壊し尽くされた街…、この途方もない現実を目の当たりにして、 自分たち消防士はどうしたらいいのか、何から手をつけていいのか、何が出来るのか、とても不安になった」なんの修飾もない、心からの告白。 それは意外なものではなく至極もっともな言葉に聞こえた。テレビから流れてきたニュース映像だけでも、あまりに凄惨で信じがたい恐ろしい光景。現実として受け入れることさえ困難なぐらい、酷い状況だっただろう。
他の男性隊員はこうも言っていた。「夕暮れになるにつれ辺りがだんだん暗くなってきて、真っ暗な闇の静寂と波打つ水の音に、とてつもない恐怖と不安を感じた」。

今回の震災が他の震災と決定的に違う点は、彼ら消防士たちの多くも一被災者だということである。他の被災地では犠牲になった消防隊員もいる。家族や友人を亡くした隊員もいる。 この若林消防署でも、実際に友人を津波で流され当初行方がわからなくなってしまったという隊員もいた。本当は一番に守ってあげたい自分の家族、幼い子どもや妻を残して救助活動に赴くのは、 どれほどの不安があっただろうか。震災発生直後から丸一週間も家族に会えないことも珍しくなく、ほとんどの家庭では停電で明かりも水も暖房もない厳しい環境にあったのだから。
そんな不安を誰しもが抱えながら、それでも隊員たちは己の任務に就く。不安を必死で押し殺し、全力で人々の救助へと向かう…。

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写真提供:仙台市消防局

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写真提供:仙台市消防局

“俺はここでたくさんの人を助けるから、
津波に流された友人をどうか返してくれ!!”


「消防人」として現場に出動する彼らに、迷いはない。ただ一人でも多くの人を助け出したい、もっと助けたい、もっと、もっと、もっと…。
その強い信念によって、瓦礫やヘドロ、冷たい海水に覆われた困難な現場の中、彼らは必死に要救助者を探し出した。「助かる命を一つでも多く見つける事、それが我々消防人の務めだ」と 、ベテラン消防士は言う。瓦礫に挟まれ動けなくなった人、海水に行く手を阻まれ身動きが取れなくなった人。様々な被災者達を少しでも多く助け出すことで、不憫をかけている家族や友人への贖罪に変えている隊員もいた。
「俺はここでたくさんの人を助けるから、津波に流された友人をどうか返してくれ!!」そう神様に願い続けながら必死に活動にあたったという隊員もいた。

彼らが何気なく口にしたこの「消防人」という言葉に全ての思いが集約されているように思えた。「消防人」…それは、強い心と強い身体を持ち、そして強い“絆”で結ばれた気骨溢れる者達。精神と肉体は日々の厳しい鍛錬によっていくらでも鍛える事ができる。しかしそれだけでは、あのような想像を絶する現場で自分を奮い立たせ続けることは決してできないだろう。それを可能にするのは、信頼できる仲間達との強い“絆”があってこそではないだろうか。

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写真提供:仙台市消防局

“自分たちだけじゃないんだ”


今回取材させてもらった若林署の隊員達が口々に言った言葉、それは全国から駆けつけてくれた緊急消防援助隊への感謝の気持ちだった。
先ほど不安な心内を素直に話してくれた女性隊員は「緊急消防援助隊の到着が何より心を励ましてくれた」と言う。 「仲間がきた!これで大丈夫、きっと私達はやり遂げることができる」「自分たちだけじゃないんだ」そう強く思ったらしい。全国各地から続々と派遣されてくる緊急消防援助隊。 厳しい東北の寒さの中、彼らはできる限り精一杯の活躍を見せてくれた。派遣期間が終わると、被災地を後にする際に食料なども置いていってくれた。
男性隊員は言う。自分たちの気持ち…不安や葛藤、辛さ、悔しさ、その全てを解かり合えるのは、やはり同じ消防人である彼らなのだ、と。そしてそれこそが“絆”であると。 そんな強い絆で結ばれた緊急消防援助隊の到着は、どれほど彼らを勇気付けただろう。

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若林消防署の皆さん

“復興の姿を見せることが、一番の恩返しになる”


震災発生から二ヶ月半が経った現在、彼らが思っていること。それは助けてくれた緊急消防援助隊への恩返しとして東北の復興を見せることだと言う。 「復興の姿を見せることが、一番の恩返しになる。今はそう信じて毎日任務に当たっています」。
そしてこうも言っていた。「何処かで災害が発生したら、真っ先に駆けつけ力を尽くしたい」。そう話す隊員の言葉には活力がみなぎっていた。

(2011年5月27日 仙台市若林消防署にて)


若林消防署の皆様、ご協力ありがとうございました。


ご多忙の中、当取材にご協力いただきまして本当にありがとうございました。普段私たちがなかなか聞くことのできない貴重な体験談の数々。 一般人の私たちにはただただ驚かされる事ばかりでしたが、この誌面を通じて全国の消防士さん達に何かメッセージを届けられればと願っております。 まだまだ復興へ向けて大変な日々が続くかと思いますが、私たちAK-SELECTも被災地の一日も早い復興を応援し続けたいと思っております。


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取材を受ける若林消防署の皆さん