TOPページ >自衛隊レポート > file no.6 整備群

航空自衛隊の中の航空総隊に隷属し、自衛隊機の墜落事故などが発生した際、その機体・乗員の捜索、救助活動を主たる任務とする一方、救助要請(災害派遣要請)にも対応し直ちに活動を開始する『航空自衛隊航空救難団』。
その救難錬度の高さから「最後の砦」と形容される。



濃尾平野の北東部、名古屋市の中心から北方約15kmに位置する航空自衛隊小牧基地は約120万平方メートルの敷地内に9つの部隊、約1,700名の隊員が所属し日夜勤務に励んでいる。愛知県が管轄する県営名古屋空港滑走路を使用していることもあり「地域との共存共栄」ということを念頭に基地運営がなされているのが特長である。

この「出動せよ!救難」シリーズの第一回目で取材を行った「救難教育隊」以来二度目の訪問となった小牧基地で、今回は航空救難団の航空機整備を一手に担う整備群を取材した。

最前線で救難活動を行う救難隊、空中輸送業務などを行うヘリコプター空輸隊、そしてその活動を航空機整備という裏方から支える整備群。それぞれが個々の能力を活かし、与えられた役割を果たすことにより、航空救難団という組織が成り立っている。そのような意味で今回の整備群の取材も余すことなくしっかりと紹介しなければと意気込んで取材に臨んだ。


現場を見る前に、まず教育講堂の一室にて林整備主任から整備群についての概要を説明していただいた。整備群の体制は、整備管理を担当する群本部のほかに検査隊、装備隊、修理隊と3つの部隊で構成され、その主たる任務は次の4つに分類される。航空機等の定期検査、航空機等の計画外整備、整備員の転換課程教育、そしてフライトシミュレーターの維持管理である。定期検査とは、航空機ごとに定められたある一定の飛行時間に達した機体の検査を行うもので、車に例えれば車検のようなイメージである。

一定の時間に達した機体は、全国の救難隊、ヘリ空輸隊からここ整備群に搬入されて、特殊工具、試験装置、計測器などを使用した機能試験等を行い部品交換の要否を決定する。航空機の計画外整備とはいわゆる故障修理のことを差す。

整備員の転換課程教育は、救難団が保有するUH-60JとU-125Aの整備に関する専門的な知識と技術を整備員が学ぶ課程であり、全国の救難隊等の整備員などが約1ヶ月程度入校して技能の習得を図っている。フライトシミュレーターの維持管理とは、救難シミュレーター棟にあるUH-60JとU-125Aの2台のフライトシミュレーターの維持管理を行うものである。

これらの説明を受け、整備群という組織をよく理解した上でいよいよ格納庫へ向かい作業現場を案内していただいた。





まず初めに訪れたのは検査隊の第2格納庫と呼ばれる場所で、ここには主にU-125A及びUH-60Jを搬入し定期検査を実施している。また隣にある第3格納庫ではCH-47Jの定期検査を実施することができる。

第2格納庫にはこの日、1機のU-125Aが搬入されており、アンテナ部の点検などをはじめ、それぞれの持ち場で総勢10名前後の整備員が作業を進めていた。第3格納庫ではCH-47Jの点検作業が同じく10名程度の整備員によりすすめられていた。

ローターヘッド部分の整備をするためにブレードが一枚一枚はずされており、整備の現場では当然の光景なのだろうが、素人の目にはローターブレードをはずされたヘリコプターなど全く見る機会がないので大変興味深かった。

格納庫前のエプロンでもU-125Aの点検作業が行われており、ここでは機体をジャッキアップし、飛行している姿勢を維持して燃料給油車が給油を行い、燃料計のレベルが正しい値を表示するかどうかの点検を行っているところだった。燃料計のレベルは航空機にとって自身が無事に帰ってくるために、その目安を図る大変重要なファクターであるのでこれらの点検も非常に細やかなチェックが必要とされる。

次に向かったのは修理隊のエンジン格納庫という場所で、ここではその名の通りエンジンの点検、修理、組立て等が行われる。気が遠くなるような細かい部品を相手に隊員達は真剣そのものの表情で作業を進めている。エンジンは航空機のいわば心臓部であり、それを預かる隊員達の眼には絶対に作業ミスをしないという強い気概が滲み出るようであった。

このフライトシミュレーターは、日本全国どこの地形でも、どんな天候でも再現でき、また、ドライビングシミュレーターのように画面が動くだけではなく、巨大なシミュレーター本体が実機のように動くのでパイロットの技術向上に非常に役立っている。

救難シミュレーター棟を一通り見たあとは、同じく装備隊の管轄である電子整備室へと移動した。ここは航空機の搭載通信電子装備品の点検、整備を行う場所で、しっかりと制電対策をされた部屋の中に精密機器がびっしりと並んでいた。整備作業を行う場所というよりは何かの管制室のような静かな緊張感のある空間であった。

ここの通信電子装備品や、先ほど見て回った、燃料計、ローターブレード、エンジンなど、そのどれをとっても一つ一つが航空機の安全運航には絶対に不可欠な物であり、そのほとんどの作業は1000分の1ミリの正確さを要求される大変シビアな現場であるということが各作業場からひしひしと伝わってきた。

今回の取材でわかったことは、整備員の任務は救難隊やヘリ空輸隊の任務に比べるとなかなか私達の目に触れる機会が少なく今まで知る由もなかったが、その職域が持つ責務はとてつもなく大きいものであるということだ。

救難隊、ヘリ空輸隊が人命救助や支援物資輸送など私達国民のために奮闘し、メディアを通じてその活動が報じられている裏ではこのように整備員が細やかにそしてひたむきに任務を遂行しているのである。一昨年前の東日本大震災ではやはり救難隊の不眠不休の活動が報じられたが、その分航空機もフル稼働しており、整備員も同じように不眠不休で航空機の整備にあたっていたのである。

航空機は様々な目的や用途によって、時代と共に飛躍的に進化を遂げてきた。古くは木造の骨組みに羽布張りで航行していたものが、現代では精密なコンピューターを駆使し、高速度での航行を可能にし、一度に多くの人員や物資を輸送でき、悪条件下でも一定のコントロールが出来るなど私達は皆少なからずその恩恵に預かっている。

このようにめざましく進化を続ける航空機だが、その航空機の整備というものは元来変わらず、人の手と目と耳で行われている。この先も航空機は更なる進化を遂げ続けるであろう、しかしロボットが人の手に変わって航空機の整備をするという時代はきっとまだ遠く、しばらくはこのように人の手で行われ続けてゆくのではないだろうか。だからこそ整備員達は日々自らの腕を磨き、目を効かせ、耳を研ぎ澄まし、航空機がいつも無事に帰ってくることを誇りに、日夜汗を流しているのである。(2013.10)