自衛隊 航空 救難団 救難隊 メディック アクチャル アクチュアル
航空自衛隊の救難任務に携わる隊員は、アクチャル・ミッション(実任務出動)のことを簡略化して、アクチャル(アクチュアル)又はミッションといいます。
ここでは実際の任務出動の経験から学び取った事などを発信し、日々救助活動に邁進されている皆様の一助にしていただきたいと思います。
元航空自衛隊メディックK

元メディックの実任務出動の記録
アクチャル03.<日航ジャンボ機の墜落・後編>


日航ジャンボ機の墜落(後編)

【前編までのあらすじ】
未曾有の大事故となった日航機123便の墜落。
緊急発進の指令を受け現場へ急行すると、暗闇の中激しく燃え上がる火柱だけが確認できる状況であった。
何とか現場付近へ進出しようと試みるが実行は叶わず、とにかく朝まで遭難者を励まそうと偵察飛行を続けた。
そして夜明けとともに現場へ向かうと、そこは・・・。
自衛隊 航空 救難団 救難隊 メディック アクチャル アクチュアル 日航 ジャンボ 墜落
アッパードアを開け視界に飛び込んできたのは、遭難現場の凄まじい惨状だった




【低空偵察】
朝、入間基地を離陸(06:30頃)し遭難現場上空に到着した。昨晩の暗黒の世界はまるで嘘のように雲ひとつなく晴れ渡り、JALの文字がくっきりと見える主翼の残骸だけが眩しく光を放っていた。障害となった鉄塔や送電線もはっきりと視認できる。直ちにJAL文字入り主翼残骸の左後方にダイレクトでアプローチしホバリングによる低空偵察を開始した。バブルウインド(捜索窓)からでは視界が狭いのでアッパードア(乗降ドア上部)をオープンし視界を確保した瞬間、目に飛び込んできた光景はおびただしい数の炭化した亡骸と焼焦げて瓦礫の山と化したジャンボ機の姿であった。このあまりにも変わり果てた光景にクルーは絶句し一瞬言葉を失ったが、機長から「生存者は必ずいる。絶対に見つけ出して救助するぞ!」と檄をとばされ我に返った。20〜30mホバリング移動した時、左側の捜索員から「10時半方向に遭難者らしき者発見」とのコールがあった。確認すると、木の枝に引っかかって垂れ下がった客室乗務員のものと思われる片足と腕の部分が救助機のダウンウォッシュでゆれ動いていた。


【機長への意見具申】
このような悲惨な状況の中、我々クルーは捜索を継続した。当該現場(半径200m程度)の半分位を捜索し終わったところで捜索エリアに散在する残骸の特徴に気付いた。殆どが黒色に変色し焼損している。このことは胴体や主翼にある燃料タンクが墜落の衝撃で破壊され、飛散した燃料とタンク内に残る燃料が燃えて巨大火炎となり、このエリアを焼き尽くしたのではないか?変色せず原色を留めている東側斜面に散在する残骸の方は火災発生の形跡は見られず、生存者のいる可能性が高いのでは?という点であった。私は、機長に対して「この尾根手前の東側斜面の方が生存者のいる可能性が高いのではないか」との意見具申をした。機長からは「状況だけでの判断はできない。」「このエリアに生存者のいる可能性は否定できない。このエリアの捜索を終了してから移動する。」との返答があった。約20分間くらい目を皿のようにして徹底的に捜索したが生存者を発見することは出来なかった。


【捜索エリアの変更(東側斜面:生存者の発見された菅の沢)】
機長判断により最初のエリアの捜索を終了し、東側斜面のエリア捜索のため同エリア上部の開けた場所へホバリング移動した。上空から見える残骸は焼焦げた形跡は全くなく、急斜面と谷底周辺に散在し一部は茂みの中に埋没していた。このため上空からの捜索では生存者の発見は困難と判断し救難員2名がホイスト降下することになった。救難員は、山岳進出の準備を完了し機長に対して「救難員降下準備よし!」と報告すると「了解」の応答に間髪入れず、「スタンバイ」「スタンバイ」「待て」と少し上ずったボイスに引き続いて「ブレーク(現場離脱)」「無線モニター」との連絡が入った。何かの緊急事態が発生したのではないかと耳を研ぎ澄ませて聞くと「間もなく、第1空挺団のレンジャー部隊がリペリング降下を実施する。現場にいる航空機は直ちに退去せよ。」とのことであった。


【現場離脱及び任務の変更】
入間基地を離陸するに当たり、「民間遭難機乗員乗客の捜索・救助を実施せよ。」との任務が付与されているにも関わらず、なぜ現場離脱をしなければならないのか疑問に思いながら急遽現場を離脱し約1.5マイル南側のジャンボ機の水平尾翼が落下している付近に移動して待機態勢に入った。ほぼ同時に南東方向から侵入して来た陸自機が先ほど救難員2名がホスト降下しようとした地点へ滑り込む様にアプローチしてリペリング降下を開始し、地上に降りた隊員が東側斜面に走る姿が見えた。  この時点をもって日航機123便の乗員乗客の捜索・救助は事実上陸上自衛隊、航空自衛隊の地上部隊及び他の消防、警察等の機関によって行われることとなり、我々救難隊の任務は同部隊等に要救難事態が発生した場合の救助(救難待機)と後方支援業務となった。  約3時間現場上空において空中待機や無線の中継を実施した後、入間基地に帰投したが、この間、報道関係のヘリや航空機が何処からともなく現場上空に次々と飛来して取材を強行し大混乱状態となった。まるで『蜂の巣を突いた様な状態』となり異常接近や空中衝突の危険を身近に感じ緊張した。
帰投後、東側斜面のエリアから陸自隊員によって抱きかかえられるようにしてヘリに収容される遭難者の姿が繰り返しTV放映されるのを見て生存者がいた事を知った。
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捜索開始から約1時間後の現場上空は、報道関係のヘリや航空機が次々と現れ
「鉢の巣を突いた様な」大混乱状態となった




【原隊復帰】
入間基地において臨時に編成された入間救難隊で1週間勤務し、救難待機、人員空輸、物資空輸、その他のあらゆる後方支援業務を実施して百里救難隊へ原隊復帰した。しかし、他部隊から集結した隊員は、これから数ヶ月の長期に渡り後方支援業務の任務を完遂し国民の負託に答えたことは言うまでもない。


【教訓】
今世紀最大といわれるこの航空機事故に於いては、その全てに教訓が詰まっているといっても過言ではない。しかし、あえて一つだけあげるとすれば、瓦礫状態となったジャンボ機を上空からみると、黒色に変色(焼損)した瓦礫が散在するエリアと変色(焼損)せず原色を留めている瓦礫が散在するエリアのふたつに大別できた。そして、変色したエリアからは亡骸が、変色していなかったエリアからは生存者が発見されている。これらの点を踏まえると現場到着後の初期段階における捜索エリアの選定は火災の発生していない原色を留めているエリアの捜索を最優先に実施することが生存者の早期発見に繋がると考えられる。

あらためて、日航機123便の墜落事故で犠牲となられた乗員乗客の方々のご冥福を心よりお祈り致します。


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